報告001 「去年の10月」に年は補われるか
2026年9月27日
問い
年の書かれていない相談文を AI に整理させたとき、原文に無い年が出力に現れるか。頼み方やモデルによって差があるか。
条件
- 事例は harras_long で、職場の嫌がらせの相談を想定した架空の相談文(2,869字)である。原文に西暦や元号は1つも無く、時期は「去年の10月」「11月10日」「年が明けて1月早々」「先週」と書かれている
- 素の頼み方は「次の話を整理してください。」に原文を付けたもの。工夫した頼み方は7項目の指示に原文を付けたもので、全文は末尾に載せた。その2項目めに「日付は本人の言い方のまま書き、書かれていない年や日付を補わない」がある
- 工程分けでは、人物・証拠・時系列を別々の工程で作らせた。時系列の工程には「原文に西暦が書かれていないなら、日付に年を補ってはならない。「去年の10月」としか書かれていないなら、それが何年かは決められない。」と指示した
- FactSort 本番は、gpt-4.1-mini の1回の出力に、原文に無い年を消すコードを通したものである
- 実行日は2026年9月27日(FactSort 本番のみ9月7日)
- 数えたのは、出力のうち「4桁の西暦+年または区切り記号」「令和・平成+数字+年」に当たる文字列で、原文に無いものの個数である。同じ年が2回出れば2と数える。数えたのはプログラムで、目では見ていない
結果
| 頼み方 | モデル | 回数 | 原文に無い年 |
|---|---|---|---|
| 素 | claude-sonnet-5(API) | 1 | 2 |
| 素 | gpt-5.5(API) | 1 | 0 |
| 素 | ChatGPT(ウェブ版) | 1 | 0 |
| 工夫 | claude-sonnet-5(API) | 1 | 0 |
| 工夫 | gpt-5.5(API) | 1 | 0 |
| 工程分け(年を補うなと指示) | gpt-4.1-mini | 3 | 9、3、0 |
| FactSort 本番(コードで年を消す) | gpt-4.1-mini | 3 | 0、0、0 |
別の2事例(chat_log、mumble_accident。いずれも原文に年が無い)では、すべての条件で0だった。
原文との対照
原文:
去年の10月、僕は経費精算の数字を見て、背中が冷えました。
年が明けて1月早々、席替えがありました。
claude-sonnet-5・素の頼み方の出力(時系列の表から):
| 2023年10月 | 佐々木部長の会議費の不自然な経費精算に気づき、「人数合わなくないですか?」と指摘。部長は表向き笑って修正、ただし目が笑っていなかった。 |
| 2024年1月初旬 | 席替えで、チームの島から離れた倉庫近くの席(エアコン直撃)に配置される。 |
同じモデルでも、工夫した頼み方で渡すと「去年の10月」のまま残った。gpt-5.5 は素の頼み方でも「去年10月」と書き、ウェブ版 ChatGPT は「昨年10月」「年明けの1月」と書いている。gpt-4.1-mini の工程分けは、時系列の本文には本人の言い方を残しながら、日付の欄に「2023-11-10」「2023-12-07」「2024-01」などを入れた。
所見
- 年の補充は、頼み方を変えると止まるモデルがある(claude-sonnet-5)
- 同じ種類の指示でも、小さいモデルは止まらないことがある。gpt-4.1-mini の工程分けでは、3回中2回で年が補われた
- 補われた年は、実行日から数えた年とも一致しない。実行日は2026年9月27日なので、去年は2025年になる
限界
- チャットの条件は各1回のため、補う頻度は分からない。素の claude-sonnet-5 が毎回補うのか、たまたまこの回だけなのかは言えない
- 事例は1つの架空の相談文で、書いたのは測定をした側である
- Claude はウェブ版でなく API で実行した
- 工程分けの実行には、年の記載に関与しない照合の工程も含まれる
- FactSort 本番の0は、モデルが年を作らなかったのか、コードが消したのかを区別できない
- 原文に年が1つでも書かれている相談文は、まだ測っていない。その場合は年を消すコードが働かない
再現資料
- 事例の原文:harras_long(/research/cases/ に公開)
- 数え方の正規表現:
(?<![0-9])(19|20)[0-9]{2}\s*(年|[-/.])|令和\s*[0-9元]+\s*年|平成\s*[0-9元]+\s*年 - 工夫した頼み方の全文:
以下は、トラブルについて本人が話した内容です。弁護士に相談する前の資料として整理してください。
1. 登場人物と関係
2. 起きた順の時系列。日付は本人の言い方のまま書き、書かれていない年や日付を補わない
3. 証拠になりうるもの。本人の手元にあるもの、相手方や第三者が持っているはずのもの、作られなかった・存在しないものを分けて
4. 本人の話が揺れている点は、一つに決めずに、揺れているまま書く
5. 本人の推測や評価は、事実と分けて書く
6. 本人が尋ねていることは、答えずに質問として書き出す
7. 話に無いことは書かない