住まい

立ち退きを求められたときの記録|貸主とのやり取りの整理

FactSort Lab.2026年3月20日2026年9月29日改稿

無償か有償かが問題になる場面

「出て行ってほしい。無償で貸していたのだから、立ち退き料は払わない」と言われることがあります。親族や知人の紹介で入居し、賃貸借契約書を交わしていない場合に起きやすい場面です。

この場面では、住まいの貸し借りが無償だったのか、賃料を払う関係だったのかが問題になることがあります。どちらに当たるかは個別の事情によって異なり、この記事では判断しません。ここでは、その判断の手がかりとなりうる記録の種類を整理します。

記録の対象になるやり取り

やり取り記録する内容
定期的な金銭のやり取り毎月の支払いと、その確認の連絡。金額が相場より低い場合も、続いていた事実を記録します。
修繕・リフォームの費用負担借主が費用を負担した場合の金額、日付、業者名、領収書。
「今月分」などの確認の連絡貸主から定期的に届いた、金銭の確認の文面。
賃料に関する交渉増額や変更の打診と、それへの返答。

契約書がない、賃料が安かった、口約束だったといった事情だけでは、どちらの関係だったかは決まりません。記録の上では、やり取りの経緯がどの程度残っているかが整理の対象になります。

やり取りごとの記録

定期的な確認の連絡

毎月決まった時期に、貸主から「今月分、よろしくお願いします」といった連絡が届いていた場合は、届いた日付、通数、期間を記録します。下の例では、3年余りの間に41通が届いています。

修繕・リフォームの費用

給湯器の交換や洗面台の修理を借主が自費で行った場合は、領収書の金額、日付、業者名を控えます。例では、給湯器の交換(138,600円)と洗面台の修理(28,600円)を借主が負担し、合計は167,200円です。修繕について貸主に連絡したときの返信も、あわせて記録の対象になります。

退去を求められる前後の経過

退去を求める連絡が届いた日の前後1〜3か月のやり取りを、日付順に確認します。例では、2024年9月15日に貸主から増額の打診が届き、10月3日に借主が断り、10月8日に3月末での退去を求める連絡が届いています。断ってから退去を求められるまでは5日です。経過が日付とともに残っていれば、相談を受けた側が前後関係を確認できます。

整理の手順

  1. 手元の記録を集めます。メッセージのスクリーンショット、修繕・リフォームの領収書、工事業者とのやり取り、振込の記録などです。「今月分」という文言を含むメッセージは通数と期間を、領収書は金額、日付、業者名を控えます。
  2. 退去を求められた日の1〜3か月前からのやり取りを確認し、金銭に関する話題、交渉の打診、それへの返答を日付とともに書き出します。
  3. 毎月の確認、修繕費の負担、増額の打診など、金銭に関わるやり取りに印を付け、日付と出典(LINE、領収書など)を書き添えます。

出力の例

相談では、入居の時期、賃料の額、契約書の有無などが質問されることがあります。以下は、上の手順で集めた記録を整理の道具に入力したときの、事実関係整理書と時系列一覧表の例です。

出力の例(架空の事例)

第1 事案の概要

申告者(借主、30代)が2021年4月より親族(貸主)所有の物件に入居。口頭で「格安でいいから気にしないで」と告げられたが、入居直後より貸主から毎月「今月分」の金銭確認がLINEで行われ、2021年4月から2024年9月の間に計41通の確認メッセージが届いている。同期間中、給湯器交換(138,600円)および洗面台修理(28,600円)を借主が自己負担し、修繕費の総計は167,200円。2024年9月15日、貸主より月額の増額の打診があり、借主がこれを断った5日後の2024年10月8日に退去を求める連絡を受けた。

第2 分類別集計

「今月分」確認LINE:41通/修繕費自己負担:2件・167,200円/賃料交渉のやり取り:4通/退去を求める連絡:1通

第3 時系列記録

日付分類出来事記録
2021/04/01入居口頭で「格安でいいから気にしないで」と告げられ入居。賃貸借契約書・使用貸借契約書ともに締結なし。なし
2021/04/20確認貸主より「今月分、よろしくお願いします」とのLINE受信。入居から20日後、初回の金銭確認。以降、毎月15〜22日頃に同様のやり取りが続く。LINE
2022/11/03修繕給湯器が故障。貸主に連絡したところ「自分でお願い」と言われ、借主がA設備工業に修理を依頼。LINE
2022/11/07修繕A設備工業による給湯器交換工事完了。支払い138,600円(領収書 No.22110203)。借主が全額負担。領収書
2023/04/17修繕洗面台蛇口の水漏れ。Bサービスに修理を依頼し完了。支払い28,600円(領収書 No.23042201)。借主が全額負担。領収書
2024/09/15賃料交渉貸主より「実は来年から月々の金額を少し上げていただければと思っていまして」とのLINE受信。具体的な金額の提示なし。LINE
2024/10/03賃料交渉借主より「現状維持でお願いしたい」と返信。「それが難しいようであれば今後について検討します」と付記。LINE
2024/10/08退去貸主より「では、来年3月末での退去をお願いしたいのですが」とのLINE受信。増額を断ってから5日後。LINE

第4 証拠一覧

「今月分」確認LINEのスクリーンショット(2021/04〜2024/09、計41通)/給湯器交換領収書(138,600円、2022/11/07)/洗面台修理領収書(28,600円、2023/04/17)/修繕依頼と「自分でお願い」とのLINEのやり取り/賃料増額交渉のLINEスクリーンショット(2024/09/15〜10/08、計4通)/退去を求めるLINEのスクリーンショット(2024/10/08)

実際の出力は PDF で、内容は入力した記録によって異なります。

相談先の種類

相談先には、弁護士のほか、自治体や行政の相談窓口があります。扱う範囲は窓口によって異なります。

この記事は一般的な情報の紹介であり、個別の事案についての法律上の助言ではありません。